大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和24年(オ)28号 判決 1953年5月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一、二点について、

原判決が所論摘示のとおり判示したことは所論のとおりである。そして、その判示によれば、所論のごとく、農地の定義と小作地の定義とを混同した嫌のあること、又は、農地であるかどうかの基準をその土地が耕作のため継績的に使用されているか一時的に使用されているかに求めているがごとくであることは、所論のとおりである。しかし、原判決は、本件土地が農地であるか否かを判定するのに、先ず、「自作農創設特別措置法において農地というのは、同法二条一項に定めるとおり耕作の目的に供される土地をいう」ものである旨明かに判示し、次に、挙示の証拠に基き、本件土地は住宅として申分のない土地で、昭和一八年九月頃北条福次郎において該土地に判示のごとく土工工事を施して宅地としての形態を整え、被上告人が昭和一九年三月北条から右土地を買受け周囲に生垣を作り建築しようとしたが戦争中で建築制限、資材不足などのため中止し、更らに昭和二二年六月二五日吉本正典が被上告人から本件土地を買受け同年八月一六日奈良県知事から建築物新築許可を受け建築に着工し土台石を運び入れた事実等を認定判示した上、「右土地については右に認定するとおり客観的にも宅地としての要件を備えており既に現実に建築工事にとりかかろうとしたもの」と結論して、結局本件土地を農地にあたらないものと判断したものであること原判決の判示に照し明らかである。されば、原判決には、所論のごとき同法二条一項の解釈、適用を誤つた違法は認めることができない。

同第三点、第四点について、

原判決は、結局本件土地を農地にあたらないものとして上告人の裁決を取消したものであつて、本件土地を農地であるが小作地ではないとし、又は、本件土地を同法五条五号に該当する農地であるとしたものでないことは、その判示に照し明瞭である。それ故、各論旨は、いずれもその前提において採用し難い。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例